八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫)



八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫)
八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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緒戦の2ヶ月間がもたらした影響

上巻に引き続き,第1次世界大戦の最初の2ヶ月間にわたる戦闘と,各国の上層部におけるさまざまな動きが詳細に述べられている。

非常に膨大な資料(日本語版では参考文献は掲載されていないが,原書では50ページにわたり参考文献と注が記されているようである)に基づいて分析がなされ,できうる限りの独断を排除して戦争の経緯が述べられている。本文中に出てくる人物のセリフや私的感情の描写は想像によるものではなく,すべて手記,記録文書,インタヴューなどの一次資料によって裏づけられているものである。

基本的には,史実にのっとって戦争の実態を政治家,軍人,兵士,一般市民それぞれの立場から多面的に解き明かしていくという方法をとっている。その内容は,なかなかエキサイティングで,戦争に携わった人々の焦り,政治家と軍人との対立,軍人同士の対立などがよく描かれていると思う。

そして本書の最後に,この2ヶ月間の戦闘の大詰めとなるマルヌの会戦の歴史的意義が短いながらも端的に記されている。つまり,この2ヶ月の間の戦いが,その後の歴史にどのような影響を与えたのかが,歴史家バーバラ・タックマンの視点から説き明かされるのである。

この本は,単なる戦争の一場面を記したものではなく,その一場面を描くことによって戦争そのものの歴史的本質を語っているものと考えられるだろう。一読の価値は十分にあると思う。



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