八犬伝(上)―山田風太郎傑作大全〈20〉 (広済堂文庫)



八犬伝(上)―山田風太郎傑作大全〈20〉 (広済堂文庫)
八犬伝(上)―山田風太郎傑作大全〈20〉 (広済堂文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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読みやすい

まず新聞掲載の娯楽小説のため全て現代語でかつ丁寧に書いてありますので読みやすくなっています。孝義忠信悌礼智仁の玉をを持ち犬の文字が名字に入っている八犬士が登場し勧善懲悪の時代劇を繰り広げる滝沢馬琴の南総里見八犬伝を基に書かれています。
山田氏の八犬伝では南総里見八犬伝の筋を描いた「虚の世界」と、作者である滝沢馬琴とその家族や同時代の葛飾北斎、鶴屋南北、渡辺崋山を登場させて馬琴の家庭事情や綿密、粘着、執拗な性格を描き出した「実の世界」が交互に書かれています。上巻、下巻とも読みましたが上巻は虚の世界が下巻は実の世界が面白く感じました。
絶品!

子供の頃、むさぼるように読んだ南総里見八犬伝でしたが、改めて本来の物を読んでみようと思い立ち、それで手に取ったのが、山田風太郎作品との出会いでした。
山田風太郎という人は名前は知っていたものの、正直、これほどの使い手だとはつゆ知りませんでした。

ある意味、この八犬伝は本来の八犬伝を超えたと言っても過言ではないように思えます。
南総里見八犬伝という「物語」と、書き手の滝沢馬琴の生きた文化文政という時代のうねりという「物語」とが同時並行している八犬伝であり、とにかく、その奥行きの深さ、表現力の巧みさに舌を巻きました。
言うならば、司馬遼太郎という人が、その緻密な構想力を駆使した絶妙のコントロールと投球術で打ち取るタイプなら、山田風太郎は絶品の切れ味鋭い変化球をコーナーいっぱいに投げ込んでくるタイプだと思いました。
ある意味、二人は時代が違えば、「天徳内裏歌合」での壬生忠見と平兼盛であったのかもしれません。

とにかく、一度、読んでみる価値は十分にあるように思います。
面白かったですよ。
特に、我々、NHKのテレビ人形劇「新・八犬伝」世代には・・・。
実に面白い「八犬伝」

今、数多くの「八犬伝」のリメイクが出回っているようだが、この風太郎版はそれらと全く性質を異にしている。つまり、江戸時代、滝沢馬琴がこの「南総里見八犬伝」を、書く事を想い付き、創作して行く過程をつぶさに描いている事にある。先に共に「椿説弓張月」で仕事していた画工、葛飾北斎を相手に書きかけの原稿の感想を聞いたり、又、先の成り行きを述べたりしている。ここで、江戸の物書き、又浮世絵師達の暮らし振りが手に取るように良く判る。
最高に面白いのは、芝居小屋の奈落で、「四谷怪談」の戯作者、鶴屋南北との物語に於ける「虚」と「實」に対する激しい遣り取りである。

又、晩年、眼を患い文盲の嫁と手を取り合って、この小説を完成させた所等、実に泣かせてくれる。肝心の「八犬伝」の筆さばきも見事だが、「明治物」や「忍者者」を書かせたら一流の山田風太郎、二倍にも三倍にも楽しめた「風太郎八犬伝」である。
一つの到達点

その昔朝日新聞の夕刊に連載されたこの「八犬伝」は、山田風太郎フィクションの一つの到達点であろうと思われます。「虚の世界」=八犬伝のストーリーのパートでは「忍法帖」の伝奇的なストーリーのストレートな面白さが、「実の世界」=馬琴の実生活の描写パートでは「明治物」特有のリアル感と馬琴の同時代人の意外な交錯の面白さが、読者を楽しませてくれます。話の進行に従い読者の興味をヨリ「実の世界」へと引き付けてゆき、最後に「虚実冥合」のパートへと到る展開はまさに巧者のわざ。「虚実冥合」では作者自身の心情も表されているように思われました。人に薦めるに耐えうる作品だと思います。本当に面白いですよ。



廣済堂出版
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